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2019年9月17日火曜日

◆How "Windows Sonic for Headphones” looks like.:コンテンツ(音源)が左右する、Windows Sonic for Headphonesの効果:その1

Windows10のパソコンで、Windows Sonic for Headphonesを利用すると、立体音響を楽しむことができます。

 サウンドの設定メニューで、簡単にWindows Sonic for Headphonesを「オン」にすることができます。

 元々、Windows Sonic for Headphonesは、ゲーム向けを想定して開発されたのかもしれませんが、Netflixの5.1ch音声やDolby Atmos音声の映画やドラマを観る時にも利用することができます。



 私の場合は、主にNetflixの5.1ch音声の映画やドラマを観る時に活用しています。サブウーファーがオンになるようなので、迫力ある音声を楽しんでいます。
 
 そのWindows Sonic for Headphonesの効果は、コンテンツ(音源)の仕様によって左右されます。
 
 音声を再生するアプリケーションの側からすると、Windows Sonic for Headphonesは「マルチチャンネルのスピーカーシステムとして見える」ようです。

「マルチチャンネルのスピーカーシステム」向けに出力された音声データを、Windows Sonic for Headphonesが処理して、2chステレオの普通のヘッドホンで聴いた時に、立体的に聴こえるようにしています。

 つまり、Windows Sonic for Headphonesは、Dolby Digital Plus 5.1chやDolby Atmosなどのサラウンドサウンドや立体音響の音声を処理して、2chステレオの普通のヘッドホンやイヤホンで再生した時に立体的に聴こえるようにしています。

 Windows Sonic for Headphonesは、仮想的な「マルチチャンネルのスピーカーシステム」と言えるでしょう。しかも、Dolby Atmosのような「オブジェクトベースの音響」(音源に音の位置、大きさ、動きなどの情報を付加して表現する音響)にも対応しています。

 もし、音源がDolby Digital Plus 5.1chやDolby Atmosなどではなく、2chステレオ音声だとしたら、2chステレオ音声を仮想的な「マルチチャンネルのスピーカーシステム」で聴くことになるので、立体音響の効果は期待できないでしょう。

 「音源の仕様・スペック」「再生アプリの仕様・スペック」「スピーカーシステムの仕様・スペック」がすべてそろった時に、立体音響が最適化されて再生されます。

 仮想的な「マルチチャンネルのスピーカーシステム」であるWindows Sonic for Headphonesの効果は、マルチチャンネルの音源を利用することによって最適化することができます。

 Windows Sonic for Headphonesの効果が最大に得られるのは、次のような場合だと思います。

「立体的な音源」→「立体的な音源の再生に対応したソフト」→「Windows Sonic for Headphonesの処理」→「立体的にヘッドホンに出力」


◆Windows Sonic for Headphonesは、最高で仮想的な8.1.4.4チャンネルスピーカーシステムまで対応
 
 Microsoftの情報によると、Windows Sonic for Headphonesは、仮想的な8.1.4.4チャンネルスピーカーシステムとして扱えるので、8.1.4.4チャンネルシステム※向けの音源を作成すれば、Windows Sonic for Headphonesによって仮想的な8.1.4.4チャンネルシステムでその音源を楽しむことができるということになります。
 
 しかし、現状では、8.1.4.4チャンネルの音源のコンテンツはほとんどないと思われるので、実際には、5.1chや7.1chの音声を再生するのに利用されることが多いと思います。


※8.1.4.4 channels (8 channels around the listener – Left, Right, Center, Side Left, Side Right, Back Left, Back Right, and Back Center; 1 low frequency effects channel; 4 channels above the listener; 4 channels below the listener). 



◆Windows Sonic for Headphonesはどのような音声処理をしているのでしょうか

 Windows Sonic for Headphonesは、2chステレオのヘッドホンやイヤホンで利用します。

 2chステレオの普通のヘッドホンで、どのようにサラウンドサウンドを表現しているのでしょうか。

 例えば、左後ろから音が聴こえているとします。人間は、左耳と右耳に聴こえる音のレベルの違いや、左耳と右耳の微妙な時間差などから、その音の音源が左後ろにあると判断していると考えられています。

 ということは、左後ろから聴こえているように表現するには、左耳と右耳に聴こえる音の量の違いや、聴こえ方の違いを左右の音声で再現すればいいことになります。

 バーチャルサラウンドの多くは、頭部伝達関数(HRTF)を利用しているようです。人間は、頭の形、耳の形、身体の形などの影響を受けた音を聴いています。人間にとっての音の聴こえ方の仕組みを表そうとするのが頭部伝達関数(HRTF)というものらしいです。

 5.1chや7.1chのサラウンドサウンドのスピーカーの音の聴こえ方を、頭部伝達関数(HRTF)を利用した音声処理で2chステレオのヘッドホンやイヤホンで再現するようにしているのが、Windows Sonic for HeadphonesやDolby Atmos for Headphonesの音声処理だと思います。周波数、レベル、時間差などの音声の要素を処理していると考えられます。
 
◆Windows Sonic for Headphonesをオンにしてテストトーンを録音

 Windows Sonic for Headphonesの音声処理についての情報を得るために、ドルビー社の7.1.2chのスピーカーシステムのテストトーン動画の音声をAudacityというソフトで録音し、録音した音声データのスペクトラム※を比較しました。



7.1.2チャンネルスピーカーシステムのテストトーンを録音しました

 7.1.2チャンネルのスピーカーのテストトーンをWindows Sonic for Headphonesをオンにしたパソコンで再生してその音声をパソコンで録音しました。
 
 下の図は録音データのスペクトログラム※です。図の上部がLeftトラック、下部がRightトラックの録音になります。

 テストトーンは、Left、Right、Center、Subwoofer、Side Left、Side Right、Back Left、Back Right、Top middle Left、Top middle Rightのスピーカーの順に個別に再生されています。


※スペクトログラム(横軸:時間、縦軸:周波数、色:dB)

 この録音データから、Windows Sonic for Headphonesをオンにしたパソコンで7.1.2チャンネルのスピーカーシステムの音声がどのように処理されているのかの情報を得ることができるはずです。

 Leftのスピーカーの音声の場合、Windows Sonic for Headphonesの処理によってLeftトラックだけでなくRightトラックにも音声が記録されていることがわかります。

 左側のスピーカーの音だからといって、左耳にしか音が届かないわけではありません。左耳により強く、右耳にやや弱く音が届いているはずです。微妙な時間差もあるはずです。それを、Windows Sonic for Headphonesの処理が表現しようとしているのだと思います。

 また、左から4番目のSubwooferの音声が録音されていますが、Windows Sonic for Headphonesをオフにして録音した場合には、Subwooferの音声が録音されていません。ということは、Windows Sonic for Headphonesをオンにすることによって、低音の迫力を増加できることがはっきりとわかります。

 図の縦軸が周波数なので、Subwooferのところは、グラフでは小さく見えていますが、低周波領域を示しているだけで、レベルを示す「色」を見ると、非常に高いレベルであることがわかります。


◆Windows Sonic for Headphonesをオフにしてテストトーンを録音

 Windows Sonic for Headphonesをオンにして録音した場合と対比するために、「オフ」にした場合の録音もしてみました。

 左側のスピーカーの音声の場合はLeftトラックにしか音声が録音されていません。右側のスピーカーの音声の場合はRightトラックにしか音声が録音されていません。

 Windows Sonic for Headphonesをオンにして録音した場合には、左側のスピーカーの音声であっても、LeftトラックとRightトラックの両方に音声が録音されています。 
 
 このことから、Windows Sonic for Headphonesが、左右2チャンネルを活用して立体音響を表現しようとしていることがわかります。

 また、左から4番目のSubwooferの音声は録音されていません。

※スペクトラム(横軸:時間、縦軸:周波数、色:dB)

 Windows Sonic for Headphonesでは、ヘッドホンやイヤホンの左右2チャンネルの音声出力を活用して、立体音響を表現しようとしていることが、録音データの図によって、視覚的にもわかりました。

 Windows Sonic for Headphonesをオンにして、イヤホンでテストトーンを聴いている際に、例えば、Back Leftのスピーカーの音を聴きながら、右耳のイヤホンを外すと、スピーカーの位置が変化したように聴こえます。左側の音を左右の音声で表現していることがわかります。

 また、Windows Sonic for Headphonesをオンにすることによって、Subwooferの効果が得られることがはっきりと示されています。


■下記のURLから、立体音響の体験用MP4ファイルをダウンロードできます。
 「ダウンロード可能なドルビーテストトーンとドルビーアトモスのトレーラー」
   ​https://www.dolby.com/jp/ja/guide/test-tones.html


 「その2」では、Windows Sonic for Headphonesをオンにして録音したテストトーンのデータについてより詳しく見てみたいと思います。


 ☆関連記事
◆コンテンツ(音源)が左右する、Windows Sonic for Headphonesの効果:How "Windows Sonic for Headphones” looks like.:その2

◆We can see effects of Windows Sonic for Headphones:スペクトル解析で見るWindows Sonic:How "Windows Sonic for Headphones” looks like.:その3

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